近年、「デジタル人材の不足」「2025年の崖」といった言葉がよく取り上げられます。そもそも、デジタル人材とはどのような人で、なぜ、そしてどれぐらい不足しているのでしょうか。 以下では、デジタル人材を取り巻く市場環境や、当社が実際にお客様から伺ったデジタル人材不足における事例をご紹介します。 そして次回後編では、デジタル人材不足という課題を解決するためにどうすべきなのか、どういった手法があるのか、そして実際に解決に至った当社の事例をご紹介します。
デジタル人材ってどんな人? なぜ不足しているの?
デジタル人材とは
実は、デジタル人材についての統一的な定義はありません。政府が発表し推進している「デジタル田園都市国家構想」においても、「専門的なデジタル知識・能力を有し、デジタル実装による地域の課題解決を牽引する人材」というような表現になっています。具体的に何ができれば、従来のIT人材と違うのか、という点はあまり明確ではありません。 これらを踏まえると、デジタル人材とは従来のIT人材の延長線上にある、先進的なスキルを身に着けた人材と考えることができます。
なぜデジタル人材は不足している?
そのようなデジタル人材が、なぜ不足しているのでしょうか。いくつかの理由がありますが、ここでは以下の3つの観点で考えてみましょう。
1. 慢性的な人材不足
そもそも、日本ではどの業界でも人材不足です。特に、情報通信技術者の求人倍率は3倍を超え、IT・デジタル人材を採用したいのに難しい、という状況が続いています。また、2025年には大量採用されたバブル世代のビジネスパーソンが定年を迎えることでさらに人材不足が加速する、「2025年の崖」という現象が生じることが懸念されています。
2. 人材投資の遅れ
一方、採用が難しい場合、従業員教育に投資し、自社でデジタル人材を育成するということも考えられますが、これも進んでいません。内閣府の「令和4年度年次経済財政報告」では、企業が従業員のスキルアップに支出する費用が、減少傾向にあることが示されています。
3. ITの高度化
また、デジタル人材に求められるスキル自体が、従来のIT人材に必要なスキルを踏まえた上での高度なものです。そのため、これから育成を始めるにしても前提となるリテラシーが不足していたり、期間や予算が十分でなかったりするため成果が出にくく、デジタル人材の不足という現状を招いています。
デジタル人材不足により中小企業では何が起きる?
ここまで、日本企業全体で、デジタル人材が不足している状況を紹介しました。ではデジタル人材不足により中小企業では、どのような影響が生じるのでしょうか。
1. 現在の業務への影響
前述の「2025年の崖」は、中小企業にも大きな影響を及ぼします。大企業に比べると、中小企業におけるIT投資は低調で、システムのリプレース (更新) 間隔も長くなりがちです。そのような環境の中で、レガシーシステムを運用してきたベテランが退職すると、「技術的負債」が生じ、そのシステムを利用して行ってきた従来の業務に不具合が発生することが考えられます。
2. 新規事業への影響
技術的負債に対応するために多額の予算を投じ、また若年層の人材にレガシーシステムの運用を任せることになると、デジタルスキルを身に着ける機会が減少し、結果として企業が新しい事業に取り組むための「体力」を失ってしまいます。このような負のスパイラルが多くの中小企業で生じようとしています。
エーピーコミュニケーションズは見た!デジタル人材不足問題に直面する現場の姿
ここでは、私たちAPCがお客様から実際に伺った、デジタル人材不足が要因となる経営課題の具体例についてご紹介します。
事例1: 運用負荷の増大でIT担当がパンク寸前…
上述したように、レガシーシステムの運用負荷は高まり続けています。一方で、DXやテレワーク、セキュリティなどビジネスを推進していくために必要なIT環境の改善も不可欠です。その両方がIT担当者に求められる中で人手不足が慢性化し、DXなど社内の要望に答えることができず評価されにくい状況から予算が削減され、その結果さらに人材が不足するということがありました。
事例2: 優秀なエンジニアに仕事が集中してしまい、さばききれない…
IT担当者の負荷が高まる中でも、仕事の生産性や品質を高めるために、常に新しい技術や最新動向をキャッチアップしている優秀なエンジニアもいます。そのようなエンジニアには業務が集中しますが、一方で、社内のIT環境を整えるという役目を持っているデジタル人材は会社の売上に直結する職種ではないため評価するのが難しく、待遇がなかなか変わらないという現状があり、その結果、負荷の集中やモチベーションの低下により離職率が増加し、人材不足につながるケースがありました。 今回は、デジタル人材不足を取り巻く市場環境や、どういった課題があるのかをご紹介しました。次回は、この課題にどう向き合っていけば良いのか、解決するためにはどういった手法があるのかを、当社が提供するITインフラ自動化サービスと組み合わせながら解説します。
(→後編に続く)
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